企業経営理論

経営戦略論 リソースベースドビュー

リソースベースドビュー(RBV)とは、競争優位を獲得できるような経営資源を開発し活用するという戦略で、資源の開発・資源の活用・資源を開発し活用出来る組織の構築、を行うものです。

この考え方は、古くは1910年代から存在し、1950年代後半のペンロースの研究以降に本格化して様々な論者が研究していますが、「RBV」という単語を最初に使ったのがワーナーフェルトであるため「RBVの始祖はワーナーフェルト」だとされています。代表的な論者として、VRIO分析で有名なバーニー【企業戦略論【中】事業戦略編 競争優位の構築と持続】、顧客リサーチ能力と開発部門へのフィードバック能力が競争優位の源泉になるとしたティース【競争への挑戦―革新と再生の戦略】、ワーナーフェルトの弟子であるコリス&モンゴメリー【資源ベースの経営戦略論】、RBV研究をまとめたペタラフ、がいます。

さて、ではどの様にしてRBVから戦略を立案するのでしょうか。ここでは有名なVRIO分析を使って考えてみましょう(ちなみにVRIO分析とは、Value、Rareness、Imitability、Organization、の頭文字をとったものです)。まず最初にすることは、自社の保有資源は、市場が求める価値[製品・サービス]に応えられる質を持っているのかを確認します。つまり保有資源は価値あるものか否か、を確認します(Value)。次に、その価値ある資源は、競合が保有していない&出来ないレベルのものなのか、代替資源によって置き換えされないものなのかを確認します。つまり保有資源に希少性があるのか否かを確認します(Rareness)。その次に、その資源の希少性は、模倣により奪われないか否かを確認します。つまり模倣困難性の存在を確認します(Imitability)。最後に、模倣困難で希少性のある価値ある資源を、組織的に開発・活用できる組織体制になっているかを確認します(Organization)。
以上のステップで自社の保有資源の質を把握したら(=強み・弱みの把握になる)、強みを活かすように各階層戦略を立案します。それは、模倣困難かつ希少な価値[製品・サービス]を特定し開発する(機能戦略)→開発された価値を活用し市場に供給する(事業戦略)→それらを実現するための組織構築・運用方法を検討する(企業戦略)というステップで立案します。
ここで気付くのは、ポジショニングアプローチの戦略立案の検討ステップは 企業戦略→事業戦略→機能戦略 という順だったのに対して、RBVでは 機能戦略→事業戦略→企業戦略 の順になっていることです。これはまさに、ポジショ二ングアプローチは、産業構造を重視し内部資源はそれに適応できるよう調整するといった、いわば内部資源軽視のアプローチであるのに対し、RBVは、内部資源を積極的に活用することで産業構造に働きかける内部資源重視のアプローチであることに由来してます(このことは、両アプローチがベースとする経済理論{つまり SCPパラダイム VS レント}【産業組織論〈上〉 (1970年)】【リカード経済学入門 (1975年)】を見てもわかります)。それゆえRBVは、模倣困難かつ希少な価値の開発を重視して、それを行う機能戦略の検討からスタートし、それを実現するような組織体制を構築する企業戦略の立案が最後のステップになるのです。
このようなステップで、模倣困難かつ希少で価値のある自社特有の経営資源を、開発・蓄積・活用し、競争優位を獲得するのがRBVの戦略です。

しかし、本来は競争優位の源泉となるはずの、模倣困難かつ希少で価値のある自社特有の経営資源は、ある場面では競争優位の源泉になるかもしれませんが、別の場面では競争劣位をもたらす可能性もあります。分かりやすく言えば、どんなに優れた製品を造る能力があったとしても、当該製品を市場が求めていなければ、そんな能力はあっても意味がないと言う事です。
そう主張する論者として、特異で質の高い組織能力であっても環境変化により活用できなくなるとしたバートンや、経路依存性の重要性を説いたディレックス&クール、競争優位にあった企業が劣位になる原因をまとめた山田【逆転の競争戦略―競合企業の強みを弱みに変えるフレームワーク】、がいます。

このようにRBVは、競争優位を獲得できるような経営資源を開発し活用するという戦略で、その実行のために、資源の開発・資源の活用・それらが出来る組織の構築、を行います。ですが、環境が著しく変化すると、開発して蓄積した経営資源が活用できなくなる可能性もあります。それに対応するため、組織論にある高次ループを通じた新規の知識の獲得により、新たな経営資源の開発・蓄積に定期的に取り組むなどの活動が必要になると言えます。

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診断士受験の補完者
公的支援機関の元職員です。 このサイトは、市販テキストでは記述が不十分であったり、そもそも記述されていない各種の経営理論を紹介することで、市販テキストや資格学校の講義を補完することを目的にしています。