戦略には様々な種類がありますが、それを分類すると、階層的分類と思想内容による分類ができるようです。
まず前者は、戦略を、企業戦略・事業戦略・機能戦略、というように階層的に分類するもので、組織構造・情報流・意思決定内容の違い、などを基準にして分類するというものです。
企業戦略は、企業そのものの方向性を決定するもので、具体的には多角化の検討・複数事業部間での資源展開・組織構築などを行います。そのため、非定型的意思決定を行う、組織のトップに位置するものが立案します。
事業戦略は、個別事業における競争優位の獲得・維持方法を検討します。そのため、半定型的意思決定を行うミドルが立案します。
機能戦略では、財務・生産・調達といった機能の効率化・最適化を目指します。そのため、定型的意思決定を行うロワーが立案します。
で、各戦略は互いにリンクしており、企業戦略は事業戦略のあり方を規定し、事業戦略は機能戦略のあり方を規定するように立案すべきとされています。そのため、企業戦略→事業戦略→機能戦略の順に立案するのが望ましいとされています。代表的な論者として、アンゾフや、フォファー&シェンデルなどがいます。
この方法を実践する際に問題になるのが、各戦略の具体的な内容をどのように策定するのか、と言う事です。
それにヒントを与えるのが後者の、戦略思想による分類です。
これは、戦略を立案する際にどのような視点からアプローチするのか、を基準に分類したものです。代表的な分類として、ミンツバーグ等による10分類、青島・加藤による4分類がありますが、もっとも有名な分類としてHBR誌が特集したポジショニングアプローチとリソースベースドビュー(RBV)の2分類があります。
ポジショニングアプローチとは、収益率の高い産業に進出して基本戦略を取り、参入障壁を築いて利益を独占する、という考え方です。具体的には、5フォース分析により進出する産業を決定し(企業戦略)→3つの基本戦略により参入障壁を築いて、競争優位を獲得・維持する(事業戦略)→バリューチェーン分析により、基本戦略の実施に必要な各機能の強化・連携を進める(機能戦略)というステップで戦略を立案します。代表的な論者としては、皆さんご存知のポーターがいます。
ですが、この考え方は、①差別化・コストリーダー戦略といった手段で参入障壁を築いている企業が、長期で見るとその地位を奪われている事や、②その逆に、当初は障壁により競争劣位にあった企業が、いつの間にか障壁を破って競争優位になっている事を説明できない、等々指摘されており、これに応える考え方としてRBVが着目されました。
RBVとは、経営資源(特に 仕事の進め方や価値観などの無形資産)の質の差が競争優位の源泉になる、という考え方です。ポジショニングアプローチは、外部環境の機会に付け込み基本戦略をとること、がそのコンセプトでしたが、「では何故、同じ戦略をとった企業間で業績が異なったり、競争優位・劣位になる企業が存在するのか」については明確な答えを出せませんでした。それに答えを出したのがRBVで、その答えは「企業ごとに保有する資源が異なるので、同じ戦略を取っても業績が異なるのだ」というものでした。この事から企業は、PPMや5フォース分析のような外部環境分析をメインとする戦略ではなく、RBVのような内部環境を重視した戦略を取るべきだという声が高まったのです。では、RBVからの戦略は、どのように取れば良いのでしょうか?
その方法はまず、模倣困難かつ希少な価値[製品・サービス]を開発する(機能戦略)→開発された価値を市場に供給する(事業戦略)→それを実現するための組織構築・運用方法を検討する(企業戦略)というステップで立案します。ここで気付くのは、RBVは「模倣困難かつ希少な価値を開発する」ということから、コアコンピタンス論や知識創造理論とリンクするという事です。そのため、RBVをベースにして(または他理論と統合して)両理論は発展しています。
代表的な論者としては、始祖であるワーナーフェルト、VRIO分析で有名なバーニー、RBV研究をまとめたペタラフなどがいます。
このように、どのような視点で戦略を立案すれば良いのかが分かりにくかった各階層戦略に、思想内容による分類が視点を与えてくれました。実際に立案する際には、青島等の分類にある時間軸も考慮した戦略の立案が必須となります。